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末梢神経障害によるしびれ|しびれ診療③
今回は原因が多岐にわたる「末梢神経障害によるしびれ」についてのお話です。
しびれの原因について医療機関で説明を受けたけど、いま一つよく分からないという患者様は多いのではないでしょうか。
「脳・脊髄の障害よるしびれ」であれば、MRI検査を撮像し可視化できることが多いため、原因について診断は比較的容易と言えます。
しかし、「末梢神経の障害によるしびれ」の場合、原因について診断がつかないままであることが多いようです。
沖縄県内医療機関と県外都府県医療機関で精神神経診療に携わってきた立場から申しますと、沖縄県は特にそのような事例(末梢神経障害によるしびれが診断名が付かないままである事例)が多いです。
そこで、小禄セントラルクリニックでは沖縄県の「しびれの診療」に貢献すべく筋電計を用いた診療を展開しています。
今回は「末梢神経障害によるしびれ」とは何かを、次回は「しびれについて機能障害を視える化する筋電計を用いた検査」を説明していきます。
ここから先は、専門的な内容になりますが、
「解決していないしびれ」で悩む患者様には筋電計を備え同検査の専門医が居る当クリニックのような医療機関があることを知っていただけますと幸いです。
【末梢神経障害・ニューロパチーとは】
神経には中枢神経と末梢神経があります。
中枢神経とは脳と脊髄です。
末梢神経とは、中枢神経から枝分かれした神経です。
末梢神経は、中枢神経と体中の様々な部分を機能的に繋いでいます。
末梢神経障害(ニューロパチーと総称することが多い)とは、末梢神経が破損したり(器質的障害)、機能低下したり(機能的障害)、その働きが悪くなっている状態です。
原因は、前回ブログにも示していますのでご覧ください。
その原因は多岐にわたります。
- 糖尿病やアルコール多飲によるもの
- 物理的な圧迫によるもの
- 環境要因によるもの
- 病原体(細菌やウイルスなど)の感染によるもの
- 癌などの悪性腫瘍にともなうもの
- 遺伝するもの
など、原因を明らかにして、適切な治療を行うことで、症状を軽減/治癒させる、あるいは症状の悪化を止めることができる場合があります。
それでは、末梢神経障害・ニューロパチーを疑うべき症状について。
- 力が弱くなる
- 長期間かけて筋肉が萎縮している
- 一過性でなく持続性の症状である
- 感覚が鈍くなる
感覚には視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚といった五感以外にも痛覚、温度覚、振動覚、位置覚などがあります。
- 痛みがある
- 正座の後のようなビリビリ・ジリジリとした不快なしびれ感がある
- 起立した直後に意識を失いそうになる、意識を失う。
- 発汗の調整ができなくなる
- 重度の排尿障害や便秘がある
- 神経内科医師の診察で痙縮がなく感覚障害
なお、これらの症状は中枢神経の障害でも生じることがあります。
末梢神経の障害による症状なのか、中枢神経の障害による症状なのかを判断し、正確に診断をつけるには、詳しい経過や症状の分布についての情報が大切です。
具体的には下記が挙がります。
- いつからどこに症状が出現したのか
- どのようなしびれなのか
- どのくらい時間をかけて症状が出現したか
- どのように症状がひろがっていったか
- しびれは繰り返すのか、ずっと持続しているのか
- どのような合併症・併存症・手術加療歴をお持ちか
- 仕事内容と環境はどうであるか
- 悪化する動作・姿勢・誘因はあるか
- 改善する動作・姿勢・誘因はあるか
- 血縁者に同様症状があるか
外来を初回受診する際には、これらの情報を医師に伝えられるように予めまとめておくとよいでしょう。
以下の表1が参考となれば幸いです。
表1;手がかりとなる所見・症候と疑わしい末梢神経疾患
所見・症候 | 考慮される原因 |
対称性の障害 | びまん性疾患(例;中毒・代謝性、遺伝性、感染性、または炎症性疾患。多くの免疫性疾患) |
片側性の障害 | 局所疾患(例;単神経障害, 神経叢障害) |
単数~複数の末梢神経支配領域に限局した障害 | 単数~複数の末梢神経型の器質病変 |
手袋と靴下型の障害分布 | びまん性末梢性多発神経障害、おそらく軸索性 |
感覚障害がなく近位筋中心の疎らな筋力低下 | びまん性筋機能障害。眼球運動が侵されている場合は神経筋接合部疾患の可能性。 |
感覚障害がなく遠位筋中心の進行性の筋力低下 | 運動ニューロン疾患 |
感覚障害があり筋力低下と反射低下もある | 脱髄性末梢神経障害 |
近位筋と遠位筋の著しい筋力低下 | 後天性の脱髄性多発神経障害 |
温痛覚障害と筋委縮・筋力低下と軽度腱反射低下 | 血管疾患(例;血管炎、虚血、凝固亢進状態) |