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片頭痛と働き方改革③働き方改革と女性
片頭痛は生命を脅かしませんが生活を脅かします。
そして、片頭痛は働き盛りの女性に特に多く(男性の3~4倍)、女性のライフサイクルにも大きく関わってくる疾患です。
約8人に1人の女性が片頭痛を経験し生活と仕事へ影響が生じてしまっています。
京都宣言では片頭痛による経済的損失は年間2880億円になる試算も出されています。
働き方改革では片頭痛を持つ女性の雇用も重要なテーマだということが徐々に分かって頂けたかと思います。
「「働き方改革」は働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革」と厚生労働省のホームページで説明される働き方改革。
少子高齢化から深刻な労働力不足が進行中の日本社会で労働力不足への対策も兼ねています。
柔軟で多様な働き方に適応することで、より多くの女性が積極的かつ継続的に安定して働けるようになることは日本の社会的課題です。
働く女性を念頭においた健康経営への取り組みは、働く女性のニーズを満たすのみならず、子育て世代への健康を通して少子化対策を兼ねた社会貢献ともいえます。
経営・運営の現場レベルでみると、男女共同参画をすすめることで労働力確保のメリットのみではなく、組織の多様性が強化されビジネスチャンスがより多く生まれることや、安定的・継続的に働く女性勤続者が増えることで管理職候補の優秀な人材確保機会が増えること、業務の効率化・共有化と柔軟な勤務体制の整備(女性の安定した勤務継続に必要な条件)をすることを通して運営強化・活性化に繋がります。
働き方改革を通してわが国もようやく女性が活躍できる社会づくりが具体化する機運が高まってきています。
【女性の働き方改革は男性の働き方改革と密接に関連】
図①は労働力人口及び労働人口総数に占める女性割合の推移を示しています。
女性労働人口は昭和60年には40%弱であったものの、年毎に増加し令和4年には45%に達しています。
割合では他国と比較しても同程度のレベルに漸く到達してきたようです。
図① 労働人口及び労働人口総数に占める女性割合の推移(令和4年版 働く女性の実情 厚生労働省)
そして、就業形態で女性の働き方をみてみましょう。
図②は就業形態別内訳でみた男女の年齢別の労働力人口比率です。
男性は25歳~59歳まで正規雇用割合が70%以上で安定しています。
かたや女性は25歳~29歳に正規雇用割合が50~60%ですが、他の年齢階級では30~40%に留まっておるために長期にわたり非正規雇用という不安定な就業形態となっていることが見て取れます。
図② 男女の年齢別の労働力人口比率・就業形態別内訳(2022年) 令和5年販 男女共同参画白書より
そこで、年齢別にみた女性の就業率を海外諸国と比べてみます(図③)。
古いデータで恐縮です。
日本は25-29歳をピークに30-40歳で就業率が低く、その後の年齢では就業率が若干上がるものの欧州各国より就業率が有意に低いということが見て取れます。(福井県と富山県は欧州各国と遜色ない就業率であることは日本の平均的とは女性就業先の産業種別が異なるためだと考えられます。)
図③ 欧州各国と日本の女性の年齢階級別就業率の比較(平成27年)
そこで、男女別で労働時間と家事育児との時間の使い方を比較します。
図④は男女別の生活時間の国際比較です。
各国に比べ、日本は男性の有償労働時間(仕事時間)が特に長く、世界で最も長い水準となっています。一方で、無償労働時間(家事育児時間)については男性は大変短く、女性が多くを担い男性の5.5倍にもなっています。
似たような傾向は韓国で診られますが、家事育児時間が女性に偏っている傾向は日本が飛び抜けて強いという結果です。
図④ 男女別の生活時間の国際比較(有償労働と無償労働の1日当たり週全体平均時間) 内閣府「男女共同参画白書」(令和2年版)
日本の子育て世代の男女の家事関連時間について、次は経時的変化をみてみます。
2001年から2021年の経時的変化は図⑤に示すように男性の家事時間と育児時間はともに増え、女性では家事時間が減り育児時間が増えています。
図⑥は6歳未満の子供を持つ男女が共働き(実線)か否か(破線)で男女の家事関連時間の経時的な変化をみたものです。
男性は共働きか否かは関係なく家事関連時間が経時的に増加傾向にあります。
女性側も家事関連時間は経時的に増加しているものの、男女共働きの方が共働きではない(女性が専業主婦)場合よりも家事関連時間を大きく減らすことが出来ています。
『男性の家事関連時間が経時的に少し増えたことで女性の家事育児負担が大幅に軽減されてきている』といっても過言ではないでしょう。
図⑤ 6歳未満の子供を持つ夫・妻の家事関連時間の推移;週全体平均時間(2001年~2021年) 総務省統計局 統計Today No.190 我が国における家事関連時間の男女の差 より
図⑥ 6歳未満の子供を持つ夫・妻の家事関連時間の推移;2006年~2021年(共働きか否かで比較表示。家事関連時間を家事時間と育児時間に分けて表示) 総務省統計局 統計Today No.190 我が国における家事関連時間の男女の差 より
男女別にみる経時的な家事関連時間の変化を国際比較したものが図⑦です。
2016年に比べ2021年には日本人男性の家事関連時間が増えた(1.23時間→1.54時間)ものの、米国人に比べると未だ半分未満(週全体平均で日本人男性1.54時間 vs 米国人男性3.37時間)だと見て取れます。
図⑦ 6歳未満の子供を持つ夫・妻の家事関連時間;週全体平均 令和5年版 男女共同参画白書より
【まとめ】
働き方改革の骨子でもある女性の安定的・継続的な雇用(正規雇用)を増やし女性が出産を機に退職や非正規雇用とならないようにするためには、男性の家事関連時間を諸外国レベルまで増やすことが有効な対策となるだろうと考えられます。
時代の移り変わりとともに改善傾向にあるものの、日本人男性が家事育児にもっと積極的に参加しなければ正規雇用の女性職員や女性管理職を増やすことは難しい段階に至っていると言えます。
他方で、従前から根強く存在する日本人の社会通念・固定観念(ステレオタイプの役割分担として夫が自宅外で仕事をして女性が専業主婦として家を守る)が、女性の社会進出を妨げる要因の一つであり、女性の非正規雇用が多い要因の一つでもあるされてきました。
しかしながら、その様な社会通念・固定観念は経年的に解消しつつあり欧米先進国に近い考え方に変わってきています。
次回のブログでこの点にも触れます。
生活を脅かす片頭痛は女性に多く、片頭痛の有病率は特に女性で高く、女性のライフサイクルを意識した働き方改革は重要な課題であることが伝わった事と思います。
次回は、片頭痛と向き合った職場のマネジメントと労働生産性の関連を中心にお伝えします。