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片頭痛治療① ~片頭痛には【予防治療】があります~
片頭痛には【予防治療】があります
片頭痛の治療といえば、
- 『いつもの頭痛が始まったときに鎮痛薬を飲む、そして・・・我慢をする』
- 『いつもとは違う頭痛で我慢できないときは・・・病院受診し、画像検査を行い、脳出血がないことを説明され・・・頭痛が残ったまま帰宅する』
といった状況を耳にします。
残念ながらこれでは場当たり的な治療です。
片頭痛には予防治療があります。 しかし、この事はまだ十分に認知されているとはいえません。
片頭痛発作が月に2回以上、あるいは 6日以上ある方
それでは、片頭痛発作時の急性期治療のみでなく慢性期の予防治療を要する場合はどういう場合でしょうか。
『頭痛診療ガイドライン2021』からの推奨としては、
- 片頭痛発作が月に2回以上あるいは6日以上ある方
は、予防療法の実施について検討してみることが勧められます。また、
- 急性期治療のみでは片頭痛発作による日常生活の支障がある場合
- 急性期治療薬が使用できない場合
- 永続的な神経障害をきたすおそれのある特殊な片頭痛
にも予防療法を行うよう勧められます。
小禄セントラルクリニックでは全てのCGRP製剤が使用できます
具体的な予防治療は、CGRPモノクローナル抗体製剤(以下、CGRP製剤)の登場により様変わりしました。
■『CGRP製剤が登場する前の予防治療』
2021年に纏められた日本人を対象とした論文のデータ(awata, A. K. et al.: Headache. 2021; 61(3): 438-454)からお話をします。
片頭痛予防薬を中止した群は28%もおり、その60%もが副作用を理由に中止しておりました。そして、予防薬を中止した群と服薬回数や容量を減らした群を合わせると50%を超えておりました。理由は薬剤の副作用か効果不十分です。
多くの患者に支持される有効な片頭痛予防薬が欠けており、慢性片頭痛の実臨床で予防薬を細かに調整しては変更して、と治療に難渋する場面が多いことが伝わってきます。
CGRP製剤が登場する前の治療薬は、片頭痛の機序を目指した創薬の結果ではなく、他疾患への治療薬を応用して用いることで治療効果を期待するものであったことも、このような不良な結果の一因と言えそうです。
■『CGRP製剤が登場した後の予防治療』
そんな中でCGRP製剤が日本でも漸く使用できるようになりました。CGRPについて要約しますと、
- 脳血管周囲にはCGRPやSPなどの血管作動性ペプチドを含有する感覚神経が多く存在する。
- トリプタン製剤に次ぐ次世代の片頭痛治療薬としてCGRP関連抗体による特異的治療が開発された。
- CGRP関連抗体は三叉神経終末から放出されるCGRPにより誘発される血漿蛋白漏出、神経性炎症、血管拡張を抑制する。
- 単独では血管収縮作用を惹起しない。HT-1B/1D受容体作動薬と異なり、脳血管以外の心血管系への作用軽減が期待できる。
*副作用が少ないことは慢性片頭痛治療で重要な点となることは先に述べた通り。
当院は施設要件を満たしており、全てのCGRP製剤を使用できます。
下の表に示します、日本で現在使用可能なCGRP製剤の一覧の全てを扱っております。
商品名 | エムガルティ | アジョビ | アイモビーグ |
---|---|---|---|
一般名 | ガルカネズマブ | フレマネズマブ | エレヌマブ |
海外承認日 | 2018年9月(米国) | 2018年9月(米国) | 2018年5月(米国) |
国内発売日 | 2021年4月 | 2021年8月 | 2021年8月 |
機序 | ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤 | ヒト抗CGRP受容体モノクローナル抗体 | |
使用方法 | クリニック内で医師・看護師が皮下注射する。ご自宅で自動注入器を使って皮下注射ことも選択可能。 | ||
初月2本注射、その後毎月1本注射 | 4週間ごと1本注射、または12週間ごと3本注射(院内) | 4週間ごと1本注射 | |
有効成分(1本中) | ガルカネズマブ 120mg | フレマネズマブ 225mg | エレヌマブ 70mg |
添加剤(1本中) | L-ヒスチジン 0.5mg | エデト酸ナトリウム水和物0.204mg、 L-ヒスチジン 0.815mg | 精製白糖73mg |
L-ヒスチジン塩酸塩水和物1.5mg | L-ヒスチジン塩酸塩水和物3.93mg | ポリソルベート80 0.1mg | |
ポリソルベート80 0.5mg | ポリソルベート80 0.5mg | pH調整剤 適量 | |
塩化ナトリウム8.8mg | 精製白糖73mg | ||
1本あたり薬液量 | 1.0mL | 1.5mL | 1.0mL |
薬液のpH | 5.3-6.3 | 5.2-5.8 | 5.2 |
薬液の浸透圧比 | 約1 | 約1.0-1.6 | 1 |
皮下注射の方法 | 自動注入器 | 自動注入器 | 自動注入器 |
注射針 | 27G(0.4mm) | ||
注射針が刺さる長さ | 5mm | 非公表 | 6mm |
妊婦、授乳婦への投与 | 慎重投与可 | 慎重投与可 | 慎重投与可 |
最高血中濃度到達時間(Tmax) | 4.6日(1本の場合) | 7.0日(1本の場合) | 5.6日 |
5.0日(3本の場合) | |||
血中半減期(T1/2) | 28.7日(24.8-32.8日) | 33.6日(1本の場合) | 28日 |
1本の薬価 | 原価;44,943円/本 | 原価;41,167円/本 | 原価;41,051円/本 |
3割負担:13,483円/本 | 3割負担:12,350円/本 | 3割負担:12,315円/本 | |
3割負担での初回負担額 | 26,966円(初回は2本) | 12,350円 | 12,315円 |
2ヵ月目以降~1日当たりの負担(3割負担) | 約440円 | ||
重篤な副作用 | アナフィラキシー | アナフィラキシー | アナフィラキシー |
腸閉塞を伴う便秘 | |||
1%以上の確率で起こる副作用 | 注射部位疼痛(10.1%) | 注射部位疼痛(21.9%) | 便秘(1.5%) |
注射部位反応(紅斑、掻痒感、内出血、腫脹など)(14.9%) | 注射部位硬結(19.3%) | 注射部位反応(1.5%) | |
注射部位紅斑(17.7%) | 白血球減少(1.5%) | ||
注射部位反応(掻痒感、発疹など) | 傾眠(2.2%) | ||
中和抗体出現率 | 13.8%/1.5年 | 0.95%/1年 | 0.8%/5年 |
特記事項 | 他2剤より先に発売され使用例が多い。初回2本注射で即効性が期待できる。 | 12週間間隔で1回3本まとめて施注が可能なので受診回数を減らせる。 | 完全ヒトモノクローナル抗体製剤のため、中和抗体出現率が低く見込まれる。 |
CGRP関連抗体製剤は単独では血管収縮作用を誘発しないともいわれており、トリプタン製剤(HT-1B/1D受容体選択的作動薬)とは異なり、脳血管以外の心血管系への作用軽減が期待されています。三叉神経血管説における片頭痛の引き金となる重要ポイントであるCGRPの活性を抑えることができ、分子量が大きく脳、肝、腎に移行しないために、副作用が少ないと期待されています。
副作用が少ないことは慢性片頭痛治療で重要な点です。
CGRP製剤 治療成績
治療成績ですが、臨床試験を終えて実臨床で使用する場面が増え、かかりつけ医からのデータが集積されています。
投与開始から3か月以内には6~7割の患者様が、1年後には8割近くの患者様が日常生活を阻害する程の片頭痛発作から開放されています。
100%レスポンダー(頭痛が完全に消失する片頭痛患者様)は3~4割にも達しています。
こういった、大変良好な治療成績が、HIT-6やMIDASといったスコアを用いた評価でも同様に確認されています。
適応となる片頭痛症例は幅が広いといえます。
まずは、片頭痛発作抑制を目的とする発作予防薬です。こちらは、反復性片頭痛にも、慢性片頭痛にも適応があります。
使用の前提として、以下の患者様が適応となります。
適応:片頭痛発作が従来の標準治療を適切に行っていても十分にコントロールされず、程度としては日常生活に支障をきたしている
患者様の社会生活において片頭痛発作がどの程度の支障をきたしているのかの判断については、個々の症例によりますので適応の幅は実際には広いといえます。
片頭痛患者の中でも、反復性片頭痛の患者様の方が慢性片頭痛の患者様よりも治療反応が有意に良好であることも分かっております。
また、
- 急性期治療薬であるトリプタン製剤の効果が増強する例が多いこと
- CGRP製剤による全身性の副作用は殆ど見られないこと
- CGRP製剤を中断しても片頭痛が必ずしもリバウンドしないこと
- 再開により再度有効性を発揮すること
- 長期使用で自己抗体が生じ難いこと
- 自己抗体陽性例でも実地医療では治療効果低下例が殆どいないこと
など細かな情報も分かってきています。
患者様からも
- 「頭痛が半減し、人生が戻ってきた」
- 「頭痛が良くなって初めて自分の頭痛がどれだけ辛いものであったかわかった」
- 「頭痛のためにこれまで家庭生活や社会生活をいかに犠牲にしてきたかがわかった」
- 「セルフケアが上手くなった」
- 「トリプタンの使い方が上手くなった」
とお聞きします。
片頭痛患者様が頭痛で悩まされる煩わしさから一日でも早く解放されるようお手伝いします。
いつでも小禄セントラルクリニックにご相談下さい。