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てんかんと妊娠について

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院長:宮城哲哉 那覇市の神経内科・脳神経内科なら小禄セントラルクリニック
こんにちは!院長の宮城です。
妊娠可能年齢女性や妊娠出産を考えておられる女性は内服治療薬に関心が高い傾向があります。
特に、てんかんやてんかん発作に使用する薬剤には注意点が多いといえます。
前回までの説明に続いて、今回はてんかんと妊娠について記載させて頂きました。

 

てんかん発作は、妊娠にどのような影響を及ぼしますか?

 

1. てんかん発作が妊娠に及ぼす影響

 

てんかんをもつ女性の自然流産の発生率は、有意差は明確ではないものの一般人口よりも多い傾向にあるという意見があります。

主な理由は全身けいれん発作の重積状態です。

妊娠中に全身けいれん発作が起こると、胎児の心臓の拍動が速くなり低酸素状態を招きますが、重積状態とならない限り胎児死亡につながることはありません。

葉酸欠乏症による巨赤芽球性貧血を防ぐため葉酸を服用します。

また、分娩時の母親の出血と新生児の出血を予防するため出産月に妊婦にビタミンKを処方する施設は少なくありません。

 

2. 妊婦がてんかん発作に及ぼす影響

 

妊娠中は60%強の妊婦で発作頻度は変らず、20%弱で発作は増加し20%弱で発作は減少するといわれています。

妊娠中における抗てんかん薬の代謝の変化、プロゲステロン濃度の変化、遊離型分画の変化などが要因と説明されます。

胎児への悪影響を過剰に恐れて、自己判断で抗てんかん薬の服用を減薬および中断すると、発作は確実にふえてきます。

出産後に発作があると、育児が全うできず、子どもに思わぬ危険が及ぶことがあります。

主治医と十分に相談し、計画出産に心掛けてください。

 

母親が抗てんかん薬を服用している場合の生まれてくる子供への影響

 

妊娠中の抗てんかん薬服薬による胎児への影響は、薬の種類・量・剤数により異なります。

妊娠中の発作抑制を第一とすることを原則としながら、可能なら抗てんかん薬は単剤管理を目指し、服用量は適正量に留める工夫で対応します。

そのため、主治医と相談し減薬後にも発作が安定している状態での計画妊娠が推奨されます。

1. 先天奇形の発生率

 

一般女性から生れる子どもの奇形発生率は2~5%、抗てんかん薬を服用中の女性からの発生率は4~8%前後と約2倍とされていました。

現在は催奇形性が非服薬群と有意差がない(統計学的に同等の確率である)新規抗てんかん薬があるので主治医と相談しながらの計画妊娠が望ましいと言えます。

胎児の奇形発生は服用している薬が多種類、多量になるほど危険性が大きくなります。

服用中の薬の種類が2剤の場合と比べ3剤では2倍の、4剤では約4倍の発現率になるとのデータもあります。

奇形発生例で多い奇形は、口唇・口蓋裂、心臓、骨格の奇形などです。

 

2. 新生児期

 

頻度は十分に低いものの生後間もなくは母体から受けた薬のために、新生児の動きや呼吸が抑制されることや多動であることがあります

一過性で生後1週程たてば消えます。

また、妊娠中のビタミンK不足により新生児期に出血傾向をきたす例も頻度は低いものの報告があります。

 

3. 母乳への移行

 

母親が抗てんかん薬を服用していると一部が母乳中に移行し乳児の口に入ります。

乳児は抗てんかん薬の鎮静作用のために、体の動きが少なかったり、眠りすぎたりすることがありますが、服用量が多くなければ問題となりません(禁忌事項ではありません)。

母乳と人工乳を交代で与えるのも一法です。

 

4. てんかんは遺伝するのか

 

生まれてくる子にてんかんが発病する可能性は、一般と比較しほぼ同等と考えられています。

遺伝性がはっきりしているのは特定の難病・稀少疾患に併存するてんかんの場合です。

てんかんをお持ちの女性で妊娠・出産を経験される患者様は、そうした特定の難病や稀少疾患に罹患しておられないことが殆どです。

てんかんと妊娠|小禄セントラルクリニック 那覇市

妊娠出産と葉酸補充

葉酸は私たち人間にとって不可欠な栄養素(ビタミン)です。

胎児が母体のなかで成長していくときにも、重要な役割を果たしていると言われています。

慢性疾患の治療のために服薬を継続している患者さんでは、この葉酸が不足することがあります。

抗てんかん薬を服用している場合にも、この葉酸が不足する可能性を考える必要があります。

抗てんかん薬で発作を治療中の患者さんが妊娠初期から葉酸を服用することで、奇形の発生を少なくすることが報告されています。

てんかんと妊娠|小禄セントラルクリニック 那覇市

これまで多くの患者さんが発作の治療を継続しながら健康な赤ちゃんを出産されていますが、葉酸を服用することにより、さらに安心して妊娠出産を迎えていただきたいと考えます。

妊娠の予定があるかたは、葉酸を服用することをおすすめします。

胎児の発達は受精直後から始まり、受精してから妊娠3ヶ月までの間に重要な臓器が形成されます。

したがって、葉酸は妊娠前から服用するのが理想的です。