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片頭痛と働き方改革②片頭痛は女性に多い

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片頭痛と働き方改革;②片頭痛は女性に多い|小禄セントラルクリニック 那覇市 脳神経内科片頭痛は典型的には前兆の5分~60分後に発作性に生じる拍動性で片側性の強い頭痛であり、日本人成人の罹患率は8.4%と報告されています(日本頭痛学会)。

日常生活を脅かす程に悩ましい頭痛であることが特徴です。

片頭痛は前兆がないことも左右両側性のことも一般的に診られます。

悪心・嘔吐を伴ったり、光過敏・音過敏・嗅覚過敏を伴うことが多く、通常の活動が出来なかったり困難となるため生活の質を下げる大変悩ましい病気・状態です。

過去に本ブログで片頭痛の治療も含めて紹介もしておりますので良ければご参照下さい。

(下線部クリック または、本ブログページ最下部 #片頭痛(ハッシュタグ)からご覧いただけます)

 

先ずは女性のライフサイクルと女性ホルモンと片頭痛について簡潔にお話します。

なぜ女性に片頭痛が多いのか。女性ホルモンが関与しているということもご理解頂けるかと思います。

女性のライフステージと健康には女性ホルモン、特にエストロゲンが深く関わっています(表①)。

表① 女性のライフステージとエストロゲン

 思春期;8~18歳 エストロゲンレベルが急上昇する時期。第二次性徴出現から月経周期がほぼ順調になるまでの期間。初経遅延(15歳以上でも初経がない)、月経随伴症状(月経困難症、月経前症候群)、体重減少性無月経などのリスクが高い時期。
 性成熟期;18~45歳 エストロゲンレベルが高値で安定する時期。ワーク・ライフ・バランスを考える重要な時期。過多月経・月経困難症(子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋腫症)、妊娠・出産の関連疾患、不妊症・不育症、性感染症など、女性に特有の疾患が多い時期。
 更年期;45~55歳 閉経を境にエストロゲンレベルが急激に減少。伴い、様々な更年期症状に悩む女性が増え、日常生活に支障をきたすと更年期障害と呼ばれ治療対象となる。子宮・卵巣の悪性腫瘍や乳癌などの腫瘍の発生リスクも高まる時期。
 老年期;50代後半以降 慢性的にエストロゲンが欠落。加齢が加わり老年期障害(骨粗鬆症、動脈硬化、認知症、尿失禁、萎縮性膣症、骨盤臓器脱など)の発生リスクが高まる時期。

 

それぞれの時期で女性ホルモンの分泌が異なっており、また、約1か月の月経周期によっても女性ホルモン分泌が大きく変動することが男性とは大きく異なっています。

女性の一生はエストロゲンの影響下にあり、思春期から老年期まで1本の糸で繋がっているとも表現されます。

そして、片頭痛は女性ホルモンとの関連が知られており、各ライフステージや月経周期による病態の変化を理解し、層別化した治療を行うこととなります(図①)。

(女性のライフステージ別の片頭痛治療については後日のブログで纏めてお伝えします。)

図① 女性のライフスパンからみた片頭痛とエストロゲン濃度の関係
片頭痛と働き方改革;②片頭痛は女性に多い|小禄セントラルクリニック 那覇市 脳神経内科

(稲垣恵美子先生ご作成の図より引用)

片頭痛は働き盛りの世代の女性で特に多い(男性の3~4倍)ことは体感として分かって頂けるかと思われます。

そして、約8人に1人の女性が片頭痛を経験し生活と仕事へ影響が生じてしまっていることに注目し、働き方改革に適応している企業が増えてきていることに注目が集まっています。

働き方改革を考える前に、働き盛りの世代の女性に片頭痛が何故多いのか理解したいところです。

「片頭痛と女性と女性ホルモン(主にエストロゲン)」では以下のことが分かっています。

🔹国際疾病負担研究および日本人対象の研究(図②)からも慢性頭痛(片頭痛および緊張型頭痛)の有病率は女性で高く、頭痛による疾病負担は15~49歳女性で最も大きい。

図② 各年齢別にみた片頭痛有病率の男女比較
片頭痛と働き方改革;②片頭痛は女性に多い|小禄セントラルクリニック 那覇市 脳神経内科

Sakai E, et al. Cephalalgia 1997;17:15-55

🔹慢性疼痛性疾患は女性において有病率が高い。要因の一つに性ステロイドによる疼痛感受性の調節があげられている。
🔹三叉神経系でみると、エストロゲン濃度が低下するとセロトニンやCGRPなどを介して疼痛感受性上昇に関与し、他方で、プロゲステロンはGABA受容体を介して疼痛感受性を抑制すると報告されている。(Cupini LM, et al. J Neurol 2021;268:2355-2363. Chauvel V, et al. Cephalalgia 2018;38:427-436. Gupta S, et al. Headache 2011;51:905-922.)
🔹エストロゲンとプロゲステロンの両方の低下は三叉神経系の疼痛感受性を上昇させ、前兆のない片頭痛発作が起こりやすくなる。
🔹月経周期の片頭痛(月経時片頭痛)は大半が前兆のない片頭痛。
🔹妊娠期には前兆のない片頭痛は妊娠後期には多くが軽快か消失する。他方で、前兆のある片頭痛は軽快率が低い。(Granella F, et al. Cephalalgia 2000;20:701-707.)
🔹前兆のない片頭痛は、エストロゲンの低下により片頭痛発作が起こりやすい。
🔹前兆のある片頭痛は、エストロゲン血中濃度が高いと発作の初発が起こりやすく発作頻度が増加しやすい。
🔹月経周辺期の片頭痛発作は非月経期の発作と比較して、急性期治療薬の効果が低く再発しやすく重度で、持続時間が長い。つまり生活・仕事への支障度が高い。(Pinkerman B, et al. Cephalalgia 2010;30:1187-1194.)
🔹月経時片頭痛の治療については、2017年のsystematic reviewでみるにリザトリプタン10㎎が2時間後の頭痛消失率と投与2-24時間後の頭痛軽減率において最良のエビデンスを有するようだ。(Maasumi K,et al. Headache 2017;57:194-208.)
🔹CGRPモノクローナル抗体製剤は月経時片頭痛日数を5日/月から2日/月に有意に減少させた。(Silvestro M, et al. Pain Ther 2021;10:1203-1214.)