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パーキンソン病と排尿障害
こんにちは。院長の宮城です。 今回は、パーキンソン病という神経変性疾患に関連する 【排尿障害】についてお話しします。 |
パーキンソン病は、高齢者に多く見られる病気で、体の動きに影響を及ぼす(運動症状)ことで知られていますが、その他にもさまざまな症状(非運動症状)が現れます。
排尿障害も非運動症状のの一つであり、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
仮に認知機能の衰えも合併していると、尿失禁を繰り返すことで患者様にも介護者の方々(ご家族を含む)にも負担は大きいといえます。
患者様自身においては排出しても尿意が消えない残尿感はつらいものです。
また失禁を起こしてしまうと気分が落ち込みますし、精神的なダメージが大きいともいえます。
それでは、本題に移ります。
パーキンソン病による排尿障害では、以下のような症状が現れます。
排尿困難:尿意を感じても、なかなか排尿ができない状態です。
この症状は、尿道括約筋の運動障害が原因とされています。
パーキンソン病は進行期に入ると、自律神経障害として交感神経(蓄尿)の機能障害のみならず副交感神経(排尿)の機能障害も加わることによって、排尿困難へのアプローチが複雑となる例が散見されるようになります。
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尿失禁:我慢できずに尿が漏れてしまう事象です。
排尿~蓄尿を調整する筋肉のコントロールがうまくいかないため、思わず尿が漏れてしまうのです。
パーキンソン病に合併する排尿障害のパターンとして多くみられるのが尿失禁です。 パーキンソン病では動作緩慢やすくみ足から移動にかかる負担も、バランスを崩しやすい(姿勢反射障害)状態でもあります。 焦る気持ちが加わりますとこれらの症状が増強する傾向にあるので、さらに失禁しやすい状況となります。
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頻尿:短い時間間隔で頻繁に尿意を感じることがあります。
前立腺肥大による過活動膀胱からの頻尿という排尿障害は有名です。
パーキンソン病で高頻度に合併する自律神経障害によって、膀胱で蓄尿する機能(排尿を制御する機能)が影響を受け頻尿となる例が多いことが知られています。 頻尿ではトイレを使用する回数が増えます。トイレまで速やかに移動できなければ失禁にもつながることにもなります。 「弛緩性膀胱となっているために尿勢が弱くなり少量ずつ尿が溢れる(溢尿)状態」も尿失禁および頻尿と家族様・患者様は表現することが多いことは注意点として知っておく必要があります。 その時に抗コリン薬を良かれと思って処方することで、逆に排尿障害が悪化する例が散見されますため。 |
パーキンソン病の薬物療法について
パーキンソン病の治療には、薬物療法が主に用いられます。特に、ドーパミン補充療法が一般的です。
ドーパミン補充療法で膀胱機能もある程度改善することもあるのですが、多くの症例では、膀胱排尿筋の過活動性(尿が少しでも貯まると勝手に収縮しだし、尿意が切迫して、時に尿失禁に至る)に対して、これを抑制する薬物を更に併用することで、尿失禁や頻尿の改善が可能なこともあります。
また逆に排尿困難が強い場合も薬物療法での治療がありますし、排尿困難から過大な残尿をもつケースでは導尿法(排尿毎に管を尿道から膀胱に挿入して尿を排出する方法)で対処・治療することも可能です。
このように、パーキンソン病に合併する排尿障害は時に複雑な対応となります。
パーキンソン病の排尿障害への薬物療法は神経内科医(神経科医)と泌尿器科医で十分に連絡を取り合って対処していくことが必要な場面は多くなるといえます。