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片頭痛とは?知っているようで知らない片頭痛治療

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頭痛について、先ずは『片頭痛』から書かせて頂きます。

那覇市医師会報の令和4年夏季号第50巻第3号に掲載した私の執筆記事を転記します。

Technical termが多いのですが、頑張って一度目を通してもらえたらと思います。

完結明瞭に言葉をつづっております。

明日のブログでは平易に要点をまとめます。

那覇市医師会報|生涯教育コーナー 知っているようで知らない片頭痛治療 宮城哲哉 

那覇市医師会報の令和4年夏季号第50巻第3号 掲載

 

はじめに

片頭痛は発作性の頭痛を繰り返す疾患であり、本邦では人口の8.4%(前兆のある片頭痛が2.6%、前兆のない片頭痛が5.8%)が罹患している。

また男性に比べ 女性の有病率が高い。

発作は4~72時間程度続き片側性、拍動性で頭痛により日常生活の活動性に大きく影響し、階段の昇降など日常的な運動により頭痛が悪化し、悪心・嘔吐・光過敏・音過敏などを伴う。

片頭痛によるこのような症状は日常生活に支障をきたし、個人の健康寿命の損失や労働不能にも繋がるため、積極的な治療が求められている。

片頭痛の概念は拡大しているが、片頭痛の本質とは「日常生活の制限、吐き気・嘔吐、過敏症状」であることに留意するべきで、診断基準となっていることは周知のことである。

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片頭痛の機序

 

片頭痛の発症機序に関して、詳細は未解明だが三叉神経血管説が有力である。

これは、脳の血管が何らかの原因で収縮し、続いて血管周りの神経が刺激され拡張することにより頭痛が起こるといわれている。

片頭痛治療なら小禄セントラルクリニック(那覇市)|知っているようで知らない片頭痛

具体的には、何らかの刺激が硬膜の血管周囲に存在する三叉神経の軸索に作用し、神経終末からSubstance P(SP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、ニューロキンAなどの神経伝達物質でありかつ血管作動性物質の神経ペプチドの放出が起こり、硬膜周辺では肥満細胞の脱顆粒や血管透過性亢進、血漿タンパク流出、血管拡張などの神経原性炎症が惹起され疼痛が生じる。

さらには順行性の伝導が三叉神経脊髄路核にいたり同部位でのC-fosの産生を促し、悪心・嘔吐・自律神経の活性化・疼痛を生じ、一方で三叉神経の逆行性の伝導はSPやCGRPの遊離を促進し、血管拡張や炎症をさらに助長するという説である。

片頭痛の転帰

 

片頭痛患者の多くは加齢に伴い改善傾向を示すものの悪化する例もあり、慢性片頭痛への移行が転帰不良にあたる。

年間約3%は片頭痛発作やその他の頭痛の頻度が増加する。

慢性片頭痛に移行すると、頭痛の頻度が増え月15日以上となり治療抵抗性となる例が多い。

頭痛により不快かつ労働生産性が低下しQOLは低下し頭痛発作への恐怖・不安から抑うつも合併しやすい。

片頭痛の慢性化に関連する危険因子の中には、先天的要因、頭痛の病状、共存症、外的要因があり、是正可能な危険因子への介入は予後改善に結びつく可能性がある(1-2)

片頭痛の薬物治療

 

本稿では薬物療法について、発作時治療予防療法に分けて述べる。

片頭痛の発作時治療

片頭痛発作への治療は2000年にトリプタン製剤が承認され当時は新時代を迎えたと期待されたことは記憶に新しい。

セロトニン1B/1D 受容体作動薬であるトリプタン系の薬剤は片頭痛に対して治療有効性が高く、多くの患者に有益な効果と日常生活の質の向上をもたらした。

しかし、トリプタン製剤もその治療効果は必ずしも十分であるとは言い切れない。更には、血管収縮作用を有することから、その使用にあたり禁忌例が少なくなく、副作用(熱感、高度な倦怠感、めまいなど)の問題もある。

片頭痛の発作時の治療としてラスミジタンが本邦でも漸く使用可能となった。

今後の知見の集積が待たれる。

片頭痛の予防療法

片頭痛の予防療法は存外知られていない。

片頭痛発作時のみの治療では場当たり的な対応と言わざるをえない。

予防治療を要する目安は、片頭痛発作が月に2回以上あるいは6日以上ある場合である。

急性期治療のみでは片頭痛発作による日常生活の支障がある場合、急性期治療薬が使用できない場合、永続的な神経障害をきたすおそれのある特殊な片頭痛の場合、なども予防療法開始が勧められる(2)

多種多様の予防薬が保険適応となっておりガイドラインを診察室に常備するとよい。

片頭痛の予防療法の新規薬剤としてCGRPモノクローナル抗体製剤(以下CGRP製剤)があり、同ガイドラインにおいてもエビデンスレベルは高い。

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画像 https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2021/20210830_1.html 画像 https://www.lillymedical.jp/ja-jp/emgality 画像 https://www.amgen.co.jp/media/news-releases/20210812

 

CGRP製剤が登場する以前は予防薬が十分に有効であったとは言えず、片頭痛予防薬を中止した群は28%もおり、その60%もが副作用を理由に中止していた既報がある。

中止群と減量群を合わせると50%を超える(3)

そしてCGRP抗体製剤が日本でも漸く使用できるようになった。

CGRP製剤は硬膜血管周囲三叉神経終末および三叉神経終末から放出されるCGRPにより誘発される血漿蛋白漏出、神経性炎症、血管拡張を抑制する。

先に示した片頭痛の機序を想起されたい。

加えてCGRP製剤は単独では血管収縮作用を惹起せず、分子量が大きく脳・肝・腎に移行せず副作用が少ないと期待される。

適応となる片頭痛症例は丁寧な診療を心掛けていれば多いと気付くだろう。

反復性片頭痛と慢性片頭痛の両方に使用可能で、従来の標準治療を適切に行っていても十分にコントロールされず発作により日常生活に支障をきたしている症例が適応となる。

結語

片頭痛発作のある症例に対し頭部画像検査で異常がないから大丈夫、と頓服薬を処方し終診、という診療に留まってはいまいか。

片頭痛による社会的損失を抑え慢性片頭痛への移行を抑制するためにも、的確な発作時治療薬と的確な慢性予防薬は重要である。

安全性と有効性に優れた新薬による恩恵を受ける片頭痛患者が増える事を期待したい。

 

参考文献

  • Aurora, S. K. et al.: Headache. 2017; 57: 109-125.
  • 慢性の診療ガイドライン2021。
  • Kawata, A. K. et al.: Headache. 2021; 61: 438-454.