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台風と片頭痛の関係性

お知らせ
院長:宮城哲哉 那覇市の神経内科・脳神経内科なら小禄セントラルクリニック

こんにちは!院長の宮城です。

台風6号が沖縄本島に上陸してしまいました。

台風の時に片頭痛がひどくなり寝込んでしまう・・・私もそのように苦しむ片頭痛患者(migraineurs)の一人です。

『原因を知り理解することで、ヒトは直面する苦しみを軽減できる』

今回は、【台風と片頭痛の関係】を簡単にまとめます。

 

【台風について】

 

台風は、暖かく湿った海洋上の気象現象であり、強力な風や豪雨を伴う巨大な渦巻きを形成します。熱帯性低気圧が発達することで台風は発生し、最大風速が34ノット以上と非常に強い風が吹き荒びます。

 

【片頭痛の病態について】

 

過去に記載したコチラ(☟)のブログ記事に纏めております。

片頭痛とは?知っているようで知らない片頭痛治療

片頭痛治療~適切な治療介入を経て明るい笑顔へ~

小禄セントラルクリニックでの片頭痛治療

社会で働き、活躍し、未来を担う世代に多い”片頭痛”

片頭痛治療① ~片頭痛には【予防治療】があります~

片頭痛とは?|知っているようで知らない片頭痛治療(1)

片頭痛治療② ~急性期治療について~

 

【台風と片頭痛の関連性:気圧の変化と片頭痛】

 

台風の接近や通過に伴って、気圧が急激に変化することが知られています。特に台風の目が通過する直前や直後には、大気圧の急激な変動が見られます。

これが片頭痛と関連していると考えられているのです。

 

なぜ台風(=強力な低気圧)で片頭痛が引き起こされるのか?

 

諸説あります。

このような場合は枝葉末節の意見を拾うのではなく、海外学術論文のREVIEWが参考となり思考の起点となります。

今回参考にしますのは、米国から2021年にpublishされたAn Overview of the Pharmacology, Biochemistry, Atmospherics, and Their Effects on Neural Networks.です。(オープンアクセスで質のよい論文に出会いやすい良い時代になりました。)

 

● 53%の片頭痛患者は、天候の変化(天候不順、梅雨の時期、台風、など)が片頭痛発作の誘因となる。●入院中の片頭痛を持病にもつ患者のうち34例で片頭痛発作が生じ、その時の気圧は1003~1007 hPA(ヘクトパスカル)であった。(標準気圧(大気圧)は1013 hPA)

Springerplus.2015;4:790.

● 片頭痛患者28人中14人が気圧が5 hPA下がることで片頭痛発作が誘発された。気圧の測定は片頭痛発作の前後2日間で測定された数値であった。また、気圧が5 hPA上がることは頭痛の頻度が下がることと関連した。

Intern Med.2011;50:1923-1928.

 

・・・ここからは動物(ラット)実験からのデータ・・・

● 低気圧に曝露されたラットは、側頭筋や硬膜でなく角膜の感覚受容野に該当する三叉神経脊髄路核(亜核)で活動電位が増加した。このことは、気圧低下(台風など)による片頭痛患者では眼痛・眼奥部痛が誘発されやすいことの示唆かもしれない

Headache.2010;50:1449-63.

● 慢性疼痛をもつラットでは、気圧の低下は交感神経活性の亢進に関連し坐骨神経痛の増強にも関連した。この効果は内耳病変によって消失した。このことは気圧変化により疼痛が昌実病態の圧センサーが内耳に位置している事を示唆する。

Neurosci Lett.1999;266:21-24.

Eur J Pain.2010;14:32-39.

● 気圧が5-27 hPA低下することでラットの上前庭神経核におかるc-fos(Cellular forskolin、神経活動性のマーカー)が増える。

 

纏めると、「わりと少しの気圧低下(5 hPA以上の低下)でも片頭痛発作は生じうる」、「気圧変化による片頭痛発作誘発は内耳にある圧センサーが反応する結果と推察される」、ということになります。

 

他にも、国内からの一部の研究によれば、気圧の変化が片頭痛の発作を引き起こす一因として、青斑核という痛みの認知・処理において重要な役割を果たす神経核での活動が影響することも報告されています。

【片頭痛と台風:個人差と予防対策】

 

ただし、片頭痛の病態は個人差が大きいため、すべての片頭痛患者に台風の気象変化が片頭痛の発作を引き起こすわけではありません。

片頭痛の発症には、他にもストレス、睡眠不足、過眠、飲酒、食事、ホルモン変化(月経)などの要因が関与することがあります。

片頭痛を持つ人々が台風の接近や通過による気圧の変化に敏感に反応する場合、予防対策が重要となります。

 

以下は、台風時に片頭痛の発作を緩和するための予防対策の例です。

①日々の健康管理:睡眠をしっかりとる、規則正しい食生活を守るなど、日常生活での健康管理が大切です。

②片頭痛日記の記録:片頭痛の発作が起こるタイミングや症状を記録することで、個人のトリガーを把握しやすくなります。

③適切な治療法の選択:片頭痛には薬物治療や非薬物療法などさまざまな治療法があります。

④専門医と相談して適切な治療法を選択しましょう。

片頭痛の薬物治療については、コチラ(☟)の過去ブログが参考になります。

片頭痛とは?知っているようで知らない片頭痛治療

⑤ストレス管理:ストレスが片頭痛の発症に影響を与えることがありますので、ストレスを軽減する方法を取り入れることが重要です。

 

【まとめ】

 

台風と片頭痛は本質的には異なる現象ですが、一部の片頭痛患者にとって気象の変化が片頭痛の発作に影響を及ぼします。

台風の接近や通過に伴う気圧の急激な変動が、片頭痛患者の脳内の神経活動に影響を与え、片頭痛の発作を誘発すると考えられています。

片頭痛の病態は個人差が大きく、気象の変化だけが片頭痛の発作を引き起こす要因ではありません。

片頭痛を持つ人々は、個々の体質やトリガーに合わせた予防対策を取り入れることが重要です。

お困りの方は頭痛専門医・指導医に相談することをお勧めします。

頭痛のことなら・・・神経内科専門医のいる小禄セントラルクリニックまでお気軽にご相談ください。

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